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  • 2025.12.03

表現の自由はどこまで許される?具体例と判例でわかる境界線

表現の自由はどこまで許される?具体例と判例でわかる境界線

SNSや創作活動など、誰もが自由に表現できる時代において、自身の発信が法的に問題ないか不安に感じる場面は少なくありません。
表現の自由は憲法で保障された重要な権利ですが、無制限に認められるわけではなく、他者の権利を侵害する場合には制約を受けます。

表現の自由と公共の福祉のバランスを示す天秤のイメージ図
表現の自由の境界線

では、その境界線はどこにあるのでしょうか。
この記事では、表現の自由がどこまで許されるのか、名誉毀損やプライバシー侵害といった具体的なケースや実際の判例を交えながら、その範囲と限界を解説します。

表現の自由とは?憲法で保障されている国民の権利

表現の自由とは、個人が自身の思想や意見を外部に発表する自由を指し、日本国憲法第21条で保障されている国民の基本的な権利の一つです。
これには、言論、出版、集会、結社など、あらゆる表現活動が含まれます。

民主主義社会において、人々が自由に情報を得て意見を交換することは、社会が健全に機能するための基盤となります。
そのため、公権力による不当な介入や検閲は固く禁じられています。
この権利について詳しく知ることは、現代社会で活動する上で非常に重要です。

表現の自由が無制限ではない理由|公共の福祉による制約

憲法で保障された表現の自由も、完全に無制限というわけではありません。
憲法は、個人の権利が「公共の福祉」に反しない限りで保障されると定めており、他者の権利や社会全体の利益との調整が必要になる場面があります。
例えば、ある表現が他人の名誉を著しく傷つけたり、プライバシーを侵害したり、差別を助長したりする場合、その表現は制約を受けることがあります。

このように、表現の自由と他の人権が衝突する際には、両者を比較衡量し、制約が必要かどうかが判断されます。
代表的な制約の根拠として、名誉毀損、プライバシーの侵害、ヘイトスピーチという三つの類型が挙げられます。

【具体例】どこからがアウト?表現の自由の境界線

名誉毀損・プライバシー侵害・ヘイトスピーチの3つの制約類型
3つの制約類型

表現の自由には限界があるものの、具体的にどのようなケースが法的に問題となるのでしょうか。
特にインターネット上では、意図せず他者の権利を侵害してしまう可能性があります。
例えば、特定の個人や団体に対する批判的な意見表明が、どこから名誉毀損にあたるのか、あるいは、実在の人物をモデルにした漫画などの創作物がプライバシー侵害と判断されるのはどのような場合か、その境界線は曖昧に感じられるかもしれません。

ここでは、表現行為が許される範囲を超え、権利侵害と見なされる代表的なケースについて解説します。

他人の社会的評価を低下させる名誉毀損

名誉毀損は、公然と事実を摘示し、人の社会的評価を低下させた場合に成立します。
ここでいう「事実」とは、内容の真偽を問いません。
たとえ真実であっても、相手の社会的評価を下げる内容を不特定多数が認識できる状況で広めれば、名誉毀損に該当する可能性があります。

ただし、その事実が公共の利害に関わるもので、目的が専ら公益を図ることにあり、かつ内容が真実であることの証明があった場合、または真実であると信じる相当な理由があった場合には、違法性が阻却され、名誉毀損は成立しません。
政治家に関する報道や企業の不正を告発する内部告発などがこれにあたります。

私生活をみだりに公開するプライバシーの侵害

プライバシーの侵害は、一般に公開を望まない私生活上の事実を、本人の許可なくみだりに公開する行為を指します。
この権利侵害が成立するかは、公開された内容が「私生活上の事実または事実らしく受け取られる事柄」「一般人の感受性を基準にして公開を欲しないであろう事柄」「一般の人々に未だ知られていない事柄」であるか、そして公開によって本人が精神的な苦痛を感じたか、といった要素を総合的に考慮して判断されます。

たとえ内容が事実であっても、公共性がなく、本人の同意なしに公開すればプライバシー侵害となり得ます。
SNSで他人の個人情報を晒す行為などが典型例です。

特定の人々への差別を助長するヘイトスピーチ

ヘイトスピーチは、特定の人種や民族、国籍の人々に対して、差別的な意識を助長・誘発する目的で、侮辱したり脅威を与えたりする表現行為を指します。
日本では「ヘイトスピーチ解消法」が施行されており、このような不当な差別的言動は許されないと宣言されています。

この法律自体に直接的な罰則規定はありませんが、地方自治体によっては、ヘイトスピーチに対して罰金などの刑事罰を科す条例を制定している場合があります。
表現の自由は保障されるべきですが、特定の人々の尊厳を傷つけ、社会に分断を生むような差別的表現は、その自由の濫用と見なされ、法的な規制の対象となり得ます。

インターネットやSNSでの誹謗中傷

インターネットやSNSにおける匿名の誹謗中傷は、現代における表現の自由の問題として深刻化しています。
軽い気持ちで行った投稿が、名誉毀損や侮辱罪、プライバシー侵害、脅迫罪といった犯罪に該当する可能性があります。
匿名だから責任を問われないと考えるのは誤りであり、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求という手続きを通じて、投稿者の身元が特定される場合があります。

その結果、損害賠償請求や刑事告訴につながるケースも少なくありません。
オンライン上の発言であっても、現実世界と同様に、あるいは拡散性が高い分、より慎重な配慮が求められます。

企業が誹謗中傷を受けた場合、投稿の削除依頼や法的措置といった対応が考えられますが、それだけでは検索サジェストに残るネガティブなキーワードまでは対処できません。検索サジェストのネガティブワード対策については、UCWORLDの風評被害対策サービスで専門的に対応しています。

表現の自由の範囲が争われた実際の判例

表現の自由がどこまで認められ、どのような場合に制約されるのか、その具体的な境界線は、個別の事案に対する司法の判断、すなわち判例の積み重ねによって形作られてきました。
法律の条文だけでは読み解きにくい複雑な状況において、裁判所がどのように表現の自由と他の保護されるべき利益を比較衡量したのかを知ることは、その本質を理解する上で非常に有益です。

ここでは、わいせつ表現、出版前の差し止め、ヘイトスピーチという三つの異なるテーマで、表現の自由の範囲が争点となった日本の代表的な判例を紹介します。

わいせつな表現はどこまで許されるかを示した判例

わいせつな表現の規制は、表現の自由との関係で古くから議論されてきました。
有名な「チャタレー事件」の最高裁判決では、わいせつ文書の判断基準として、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの、という三要件が示されました。

この基準は、芸術作品とわいせつ物の線引きを試みるものですが、時代ごとの社会通念によって判断が変動する曖昧さも指摘されています。
芸術性や思想性が高い作品であっても、この基準に照らして「わいせつ」と判断されれば、刑法175条のわいせつ物頒布等の罪に問われる可能性があり、表現の自由も絶対的なものではないことが示されています。

出版前の差し止めが認められるかを示した判例

出版物を事前に差し止めることは、公権力による検閲につながる恐れがあり、表現の自由に対する最も強力な制約です。
そのため、裁判所は事前差し止めに対して極めて慎重な姿勢をとっています。
「北方ジャーナル事件」の最高裁判決では、この点に関する重要な判断が示されました。

判決は、事前差し止めは原則として許されないとしながらも、例外的な要件として、その表現内容が真実でなく、公共の利害に関するものでもなく、かつ被害者が被る損害が著しく重大で回復困難である場合に限って認められるとしました。
この判例により、名誉毀損を理由とする出版の事前差し止めが、極めて厳格な要件の下でのみ許容されるという基準が確立されました。

ヘイトスピーチ条例の合憲性が問われた判例

特定の集団に対する差別を煽るヘイトスピーチも表現の自由との関係で大きな問題となります。川崎市では、ヘイトスピーチの繰り返しに対し刑事罰(罰金)を科す全国初の条例を制定し、2020年7月1日から全面施行されました。

ヘイトスピーチの規制と表現の自由を巡る裁判では、大阪市で制定されたヘイトスピーチ条例の合憲性が争われた訴訟が注目を集めました。 この裁判で最高裁は2022年2月15日、条例が表現の自由に制約を加えるものであることを認めつつも、その目的が不当な差別的言動の解消にあること、規制される表現が限定的であることなどから、制約は公共の福祉による合理的で必要やむを得ない範囲にとどまるとして、憲法に違反しないと判断しました。この判例は、ヘイトスピーチのような他者の尊厳を著しく侵害する表現に対しては、条例による規制も許容されうることを示しました。

表現行為が犯罪に該当するかの具体的な判断基準については、誹謗中傷はどこから犯罪?ネットで罪になる行為の例と判断基準の記事もご参照ください。

表現の自由に関するトラブルに巻き込まれた際の相談先

自身の表現が他者の権利を侵害したと指摘された場合や、逆に自身の権利が侵害されたと感じる場合には、一人で抱え込まずに専門的な機関に相談することが重要です。
法的な問題が絡む場合は、弁護士に相談するのが最も確実な方法です。
法律の専門家として、具体的な状況に応じたアドバイスや、代理人としての交渉、訴訟対応を依頼できます。

また、法務省が管轄する「みんなの人権110番」では、人権侵害に関する様々な相談を電話で受け付けています。
インターネット上の誹謗中傷については、警察のサイバー犯罪相談窓口や、セーファーインターネット協会が運営する「誹謗中傷ホットライン」なども専門の相談先として機能しています。

まとめ

表現の自由は、日本国憲法によって保障された極めて重要な人権ですが、他者の権利を侵害する場合には無制限に認められるわけではありません。
名誉毀損やプライバシーの侵害、差別的表現など、「公共の福祉」の観点から法的な制約を受けます。
特に、インターネットやSNSの普及により、誰もが発信者となりうる現代では、意図せず他者の権利を侵害してしまうリスクも高まっています。

その境界線は、個別の事案における法律や過去の判例の積み重ねによって判断されます。
表現活動を行う際は、この自由に伴う責任を自覚し、万が一トラブルに発展した際には、速やかに弁護士などの専門機関へ相談することが求められます。


UCWORLDが選ばれる理由

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表現の自由は憲法第21条で保障された重要な権利ですが、他者の名誉を毀損したり、プライバシーを侵害したりする場合には、公共の福祉の観点から制約を受けます。
名誉毀損やプライバシー侵害の成立要件は法律や判例によって定められており、その境界線は個別の事案によって判断されます。
企業が誹謗中傷を受けた際には、投稿の削除依頼やプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求、損害賠償請求といった法的措置を取ることができます。

しかし、これらの法的対応だけでは、検索サジェストに残るネガティブなキーワードまでは対処できません。
総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する調査研究」でも、オンライン上の風評が企業活動に与える影響について指摘されています。

投稿削除と検索サジェストは別の問題

企業が誹謗中傷を受けた場合、多くは弁護士に依頼して投稿の削除や発信者情報開示請求を行います。
プロバイダ責任制限法に基づく手続きを経て、違法な投稿を削除し、投稿者を特定して損害賠償を請求することも可能です。
こうした法的措置によって、その投稿自体は削除され、投稿者には法的責任が課されます。

しかし、その誹謗中傷事件が起きたことで、検索サジェストには「企業名+炎上」「企業名+誹謗中傷」「企業名+訴訟」といったネガティブなキーワードが表示されるようになります。
投稿を削除しても、裁判で勝訴しても、検索サジェストに表示されるこれらのキーワードは残り続けます。
なぜなら、サジェストは「その事件について多くの人が検索した」という検索行動の履歴に基づいて表示されるからです。

就職活動中の学生が企業研究のために企業名を検索した瞬間、「企業名+炎上」というサジェストが表示されます。
潜在顧客が商品について調べようとした際にも、「企業名+誹謗中傷」というキーワードが目に入ります。
投稿そのものは削除されても、サジェストを通じて事件の痕跡が長期間にわたって可視化され続けるのです。

法的措置だけでは検索環境は改善しない

企業が誹謗中傷への対応として法的措置を取ることは重要です。
違法な投稿を放置せず、毅然とした態度で臨むことは、企業の信頼性を示す上でも必要です。
発信者情報開示請求には約60万円、損害賠償請求まで含めると総額100万円以上の弁護士費用がかかりますが、投稿者に法的責任を問い、二度と同様の行為を行わせないためには有効な手段です。

しかし、問題なのは、これらの法的措置が完了しても、検索サジェストのネガティブなキーワードは変わらないという点です。
投稿削除という対処は「その表現行為」への対応であり、検索サジェストという「検索環境」への対応ではありません。
投稿削除・法的措置という第一のアプローチと、検索サジェスト改善という第二のアプローチは、まったく別の問題であり、別の専門性が必要なのです。

実際に、誹謗中傷投稿の削除と損害賠償請求に成功した企業が、数ヶ月後も検索サジェストに「企業名+炎上」が表示され続け、採用活動や営業活動に支障が出たケースがあります。
法的措置だけでは、検索環境の改善には不十分だったのです。

UCWORLDの検索サジェスト根本改善

UCWORLDでは、誹謗中傷によって生じた検索サジェストのネガティブキーワードに、根本的なアプローチで対応しています。
投稿削除という一時的な対処だけでなく、ネガティブなキーワードで検索される原因そのものに働きかけ、検索行動のパターンを変化させることで、持続的な改善を実現します。

具体的には、ネガティブなキーワードでの検索行動を減少させるための施策を講じるとともに、企業の実績や顧客からの好意的な評価といったポジティブな情報を強化します。
これにより、検索サジェストに表示される候補を、ネガティブなものからポジティブなものへと段階的に転換していきます。
さらに、一度改善しても検索トレンドは常に変化するため、継続的なモニタリングによって良好な検索環境を維持するサポートも提供しています。

二つのアプローチの組み合わせが持続的な解決をもたらす

誹謗中傷への対応は、二つのアプローチを組み合わせることが重要です。
短期的なアプローチとしては、弁護士に依頼して投稿の削除や発信者情報開示請求を行い、投稿者に法的責任を問います。
これによって、違法な表現行為そのものに対処できます。

しかし、それだけでは不十分です。
中長期的なアプローチとして、検索サジェストに残るネガティブなキーワードの根本原因に対処し、検索行動のパターンそのものを変えていく必要があります。
投稿削除だけで満足してしまうと、数ヶ月後も検索サジェストに「企業名+炎上」が表示され続け、風評被害が持続します。
両方のアプローチを組み合わせることで、初めて持続的な改善が実現します。

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